小児心臓外科の施設集約化を予想してみた その2

  • 2020年7月27日
  • 2020年7月27日
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へい、らっしゃい。オペざんまい岡村です!

 

前回、日本の小児心臓外科施設集約化をDPCデータを用いて予想してみたところ、有難いことに大変大きな反響を頂きました。

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前回の記事を簡単におさらいしますと…

 

・若手小児心臓外科医のトレーニングという観点から、1施設あたり年間200例(平日毎日1件という計算)は必要だろうという考えのもと、年間200例を維持するためには、計算上は日本全国で46施設まで施設集約化を進めなければならない。

・一方で、46施設まで集約化が進むと地方の医療崩壊が加速する(かもしれない)問題が浮かび上がった…

 

という感じでした。

 

 

ある知り合いからは「いやいや、搬送ルートや予算さえ確保できれば20施設もあればいいのではないか?広大なアメリカでできて日本で出来ない訳がない。」との指摘も受けました…

 

ちなみに20施設まで集約化が進むと、計算上は1施設年間450件以上という規模になります。

 

 

これは日本の小児心臓外科の施設が全部現在の榊原記念病院並に大きくなるということを意味し、理想的にはそうあって欲しいところですが、既存の病院を利用すると考えた場合に、マンパワー(外科医, 小児科医, ICU Dr, 麻酔科医, コメディカル)・施設の規模(オペ室, ICU, PICUなど)が圧倒的に足りません。

 

 

また、患者さんや家族が長距離移動する手段(ヘリ搬送、緊急手術対応可能な救急車両の確保)や長期宿泊するための収容施設の増設など、経済的にもハードウェア的にも全く足りていません。

 

 

仮に国ベースで抜本的な改革が進んだとしても、既存の施設は元々年間450例以上の症例を想定して作られておらず、人員・ハードの再分配は複雑・困難を極めます。

やるとしたら「新たに榊原記念並の病院(宿泊施設付き)を20施設作って、既存の小児心臓外科は全て閉鎖。」「予算は全て国持ちのヘリや救急車両の確保。」「遠隔医療・オンライン診療を全国統一の形式で確立」くらいのことをしないといけない気がします。

なんかもう、CORVID-19で武漢に火神山医院を建設した時の中国政府の勢いです。

 

 

もはやスケールが大きすぎて、私の考えの及ぶところではありません😅

 

 

余談ですが、オンライン診療に関しては小児循環器だけでなくて、全ての医療界で国ベースで統一の形式で進めて欲しいですよね。

電子カルテみたいに各社がそれぞれ作ると、結局は施設間での互換性がなく、医療者の仕事が減りませんから。

技術的には絶対にできるはずなので、将来是非そうなって欲しいと思う今日この頃。

特に、地方では効果絶大でしょう。

 

 

 

 

前置きが長くなりましたが、今回は前回記事の最後に書いた通り、既存の施設を利用する形で僕なりに考えた実現可能な集約化案を提案していきたいと思います。

 

 

 

実現可能な小児心臓外科の施設集約化を考える。

 

今回も元になるデータはこちら↓から見ることができます。
このデータの作成方法については、前回記事をご覧ください。

 

 

前回記事の通り、もしも46施設まで集約化が進んだ場合に考えうる問題点は、

 

・地方で適切な治療を適切なタイミングで受けられない患者さんが多発する。

・若手医師が都市部へ偏在して、集約化の名の下に地方医療の崩壊を加速させる。

ということをお伝えしました。
一方で、症例が少なくてもいいから、とにかく施設数が多い方が良いかというと、
もちろんそんなことはなくて、成人心臓血管外科領域では10年以上前に年間50例以下の施設では手術成績にばらつきが大きくなり、極端に成績の悪い施設が増えるため、ある一定数の症例数の担保は安全管理の面で重要だということが示されました。
それに伴い心臓血管外科修練施設の基幹施設と関連施設の基準見直しが10年位前に行われています。
小児心臓外科の領域では、まだ症例数と手術成績の関連性については公式には発表されていませんが、感覚的には年間50例もない施設が、成績が良い訳ないですよね。
医者もさることながら、看護師や臨床工学技士を含めたコメディカルスタッフが小児循環器に習熟することは無理ですから。
以上から、今回は以下の2つの基準で施設を選定していきたいと思います。
① 地方の医療水準維持のために可能な範囲で各施設1件は施設を配置する
② 年間50例以下の施設は安全管理の観点から除外する
ですので選定のルールは以下の通り。
・原則、①かつ②を基準として選定する。
・地域性を考慮して一部地域で①または②を許容する(50例以下の施設名()付きで記載)。
結果は以下の通り63施設です(太字は今回追加)。

【北海道】 北海道大学、北海道立子ども

【東北】 宮城県立こども、岩手医大、福島県立医大、弘前大学

【関東】 筑波大学、北里大学、横浜市大、群馬県立小児、埼玉県立小児、埼玉医大国際医療センター、千葉県こども、(松戸市立総合医療センター)、榊原記念、都立小児、東京大学、昭和大学、慶應大学、順天堂、自治医大、神奈川県立こども、茨城県立こども成育医療研究センター日赤医療センター東京女子医大

【中部】 中京病院、名古屋市大、あいち小児、岐阜県総合医療センター、静岡県立こども、長野県立こども、富山大学、新潟大学、名古屋第二赤十字聖隷浜松(山梨大学)(福井循環器病院)

【近畿】 京都府立医大、京都大学、尼崎総合医療センター、三重大学、国立循環器病研究センター、大阪母子医療センター、大阪市立総合医療センター、兵庫県立こども、大阪医大(和歌山県立医大)(奈良県立医大)

【中四国】 岡山大学、広島市民、愛媛大学、四国こどもとおとなの医療センター、島根大学(徳島大学)

【九州沖縄】 鹿児島大学、(熊本大学)、(長崎医療センター)、福岡市立こども、JCHO九州病院、沖縄県立南部、九州大学聖マリア病院

 

 

 

上記のリストにおいても、秋田、山形、石川、滋賀、鳥取、山口、高知、佐賀、大分、宮崎の10県には小児心臓外科の施設がないことになります。

 

DPC病院情報局では出てきませんでしたが、webで調べた範囲で、各県で小児心臓外科の手術実績がある病院は以下の通りでした。

()内はHPに掲載されている年間症例数。

 

 

秋田大学(30例)

山形大学(40〜50例)

金沢医大(60例)

宮崎大学(20〜25例)

 

 

滋賀、鳥取、山口、高知、佐賀、大分の6県はweb上でも小児心臓外科の手術実績がある病院を見つけられませんでした。

(見つけられなかっただけかもしれないので、ご存知の方いらしたら是非教えてください)

 

 

個人的には、これら6県はそれぞれ隣接する県に大きな施設があるので、現時点で

「人口が少ない→出生数が少ない→結果として集約化されている」

のだと思います。

なので、これはこれで妥当なのかなと思います。

 

 

という訳で、上記63施設+秋田大学・山形大学・金沢医大・宮崎大学の計67施設あたりでいかがでしょうか?

 

もはや集約化と言えるのか分からなくなってきましたが、JCCVSD120から約半数となりましたし、最初のステップとしては上々かなと思います。

 

5年毎に基準の見直しを進め、より厳しくしていき、20年・30年かけて46施設まで絞れたらいいのではないでしょうか。

 

 

 

ま、以上は私個人の見解ですので、今後どうなるか分かりませんが、小児循環器学会の発表に期待したいと思います。

 

 

皆さんのご意見もお待ちしています。

問い合わせからでも構わないですし、下のコメント欄やFacebook, Twitterにコメントして頂いても構いません。

 

 

 

 

次回は、

施設集約化とはそもそもなんなのか?

学会の提言でどうやって実行力を持たせるのか?

はたまた実行力は伴わない提言だけなのか?

この辺りを小児心臓外科専門医の話と絡めて記事にしたいと思います。

いつになるか分からんけど。

 

 

ふぅ、づがれだーーーーー

 

 

したーーーっ

 

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