日本の小児心臓外科トレーニングは今後どうなる??その2

日本の小児心臓外科修練の今後  ~施設集約の具体的な絞り方とその根拠を考える~

 

都立小児総合医療センターの平野暁教です。前回の投稿に引き続き、「日本の小児心臓外科修練の今後」を考察してきたいと思います。前回のキーワードは、「日本で出来ることはこれですべてか?」「施設集約化で手術への大量暴露を実現する次世代育成」でした。今回は、少し数字で押してみます。

 

前回の記事はコチラ↓

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【心臓外科手術数と外科医の数を日米比較】

(2010年 日本胸部外科学会の学術調査より引用)

  心臓血管外科医の数 心臓血管外科手術の数 (/)
  総数 人口100万人あたり 総数 人口100万人あたり
米国 4737 1.6 266,000 56.1
日本 5745 4.5 105,000 18.2

 

日本の心臓外科医の数は米国より多い。人口100万人あたりの手術件数が少ない。

成人だろうが、小児だろうが、日本の心臓外科医の数は人口に比して多い、ことがわかります。

 

 

次に、小児に絞っていきます。

【小児心臓外科手術数と人口】

小児の手術件数:9400件/年(人工心肺使用 7000件) ←これは近年横ばいですが、今後下がる可能性高いです

人口12500万人ですので、人口100万人あたり75 …①

さて、都道府県の人口は、半分が150万人、20%は100万人以下(日本の人口分布は下の資料を参照)

都道府県に1施設としても手術件数が100件に満たないところがでる!

人口からの単純計算です。県別の出生率を加味するともう少し変わりますよね。

 

 

 

次は、施設集約をする目標を仮に決めてみると、施設数がどうなるか、です。

【働き方改革と次世代育成を含む施設規模の試算】

以下、坂本喜三郎先生の2019年JSPCCS発表を参考に作成しています。

 

手術件数:200件/年 (毎日1件) とすると、46施設になります。

 

おかむら犬
全国のJCCVSD登録施設が約120だから、80施設くらいは削られるんだな。

 

 

心臓外科医の数 5-6名 (根拠:手術参加 3, 病棟・外来など 1-2, 当直明けで帰宅 1)

【外科の当直日と外科医の必要数の関係】

月30日フルで当直、一人4日担当だと、8人必要

月15日当直担当だと、一人4日担当して最低4人

→集中治療チーム支援があり、外科の当直日は15/月まで

 

さてここで①より、手術件数 200件/年となる必要人口は 270万人です。

この人口を1都道府県で維持可能なのは12地域のみ!

集約化で地域性をどうする?!と思わせる岡村先生の”資料”がヤバいんです。。。現実的過ぎて、何も言えなくなります。

 

 

おかむら犬
今回は管理人の判断で”資料”掲載を控えさせてもらったぞ。後日掲載するからな。

 

 

 

以上はあくまで、施設集約を「200件/年」の手術、とした場合の試算です。150件/年とすると、もう少し実現しやすい形になるかもしれません。これを学会主導でやりましょう、としているので日本小児循環器学会の本気が伝わると思います。

 

今回のお話はまだ想像の範囲を越えませんが、自分の施設が生き残れるのか?生き残るにはどうするか?を考える良い機会かもしれないな、と思います。

 

この辺、今まで日本人らしい慎ましやかさで包まれていたことが、諸外国と日本の差なのだと感じずにはいられません。

 

 

管理人岡村のコメント

 

上記の平野先生の文章内にあります”資料”というのは、小児循環器学会会長 坂本喜三郎先生が提唱する集約化目標の46施設を、岡村個人がある方法によって具体的に(勝手に)リストアップしたものになります(学会の意見ではありません)。

 

逆に言いますと、JCCVSD登録施設120から約80施設を削ったものともいえます。

この削られてしまう80施設には多くの大学病院など大きな病院が含まれていますし、地域によっては小児心臓外科修練施設がなくなることになります。

 

岡村が勝手に考えただけなら現実は関係ないか?というと、根拠があるのでそれほど大きく外れないと考えています。

てゆーか、外れようがないと思っています。

 

 

とはいえ掲載に際しては、この根拠を説明しないと偉い先生たちに袋叩きにされかねず、今回はアップを控えさせて頂きました。

後日、僕が責任を持って記事にしたいと思います。

 

 

 

思うに、僕みたいな下っ端でも少し調べれば、症例数全国トップ40をリストアップすることは可能なので、

JCCVSDのデータを管理できるような偉い先生は、とっくに全国の症例数トップ46をリストアップしているのだと想像しています。

 

最終的には症例数トップ40施設に加えて、地域性や医療の特殊性(VAD/HTxや遺伝子異常の患者さんの診療等)などを根拠にいくつかの施設が追加されて50施設程度に落ち着くというのが、いいところなんじゃないかなと思います。

 

したーっ

 

 

 

 

 

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